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中小企業診断士。経営革新等支援機関。経営学修士(法政大学大学院経営学研究科)。 1966年島根県松江市生まれ。住宅金融専門会社~㈱住宅金融債権管理機構(現在の整理回収機構)で、融資業務のほか残高100億円超の大口案件の債権回収、企業再生を担当。その後、経営コンサルタント会社、メガバンク系列のリース会社を経て、2001年に独立。 現在、金融・財務に詳しい「中小企業の外部CFO(財務責任者)」として、実質無借金の会社から再建まっただ中の会社まで、幅広く経営のサポートに携わっている。ドンブリ経営の中小企業をキャッシュフロー経営に変えるのが得意で、会社の真の実力を引き出すため、マーケティングのアドバイス、社員教育、銀行交渉の支援などに日々奔走中。 主な著書に『中小企業のための「資金繰り・借入交渉」実践マニュアル』(日本実業出版社)などがある。 最新の著作「銀行が貸したい会社に変わる 社長のための「中小企業の決算書」財務分析のポイント」へのリンクはこちら(Amazonのサイトへリンクします) |
■2022年06月寄稿
H社は栃木県の食品卸売業。年商100億規模の会社です。
現社長は、先代社長の急逝を受け、2015年に2代目として社長に就任しました。
当時のH社は2期連続で赤字を計上していました。現社長は、社長就任時から中小企業診断士(安田)と顧問税理士のアドバイスを取り入れ、経営改善を進めました。
真っ先に取り組んだのは、先代社長が多額の資金をつぎ込んでいた不採算部門からの撤退(食品加工工場の閉鎖)です。社長は、反対する幹部社員を粘り強く説得し、1年で撤退を成し遂げました。
こうした取り組みで業績が回復すると、それまで冷たい態度だった4つの取引銀行(地方銀行)がH社に融資を売り込んでくるようになりました。
「御社には低金利で貸し出せます」「優良企業が発行する銀行保証付き私募債で対応します」「経営者保証なしの融資でも構いません」などと持ち上げられることにより、社長は「これだけ銀行が貸したいと言ってくるのだから、ウチの会社は大丈夫」と甘い考えを持つようになります。
銀行の融資セールスは、しばしば中小企業経営者のモラルハザードを助長します。H社の場合は、「銀行に勧められて投資信託を購入する」「接待交際費が必要以上に増加する」「前期の業績に満足し、それ以上の改善を社員に求めない」「新規採用や人材育成を軽視する」といったことが起きていました。
そこで私は、H社の直近の決算書(2019年)をMcSSで診断し、次のように社長を説得しました。
「当社の財務格付けは、偏差値49のCランク。平均より下です。」
「自己資本比率はわずか11%で、借入金依存度も70%を超えています。再び業績が悪化すれば、Dランク以下に転落し、融資を受けられなくなります。」
「よって財務体質改善の手をゆるめてはいけません。」
社長は銀行員のセールストークとMcSSのギャップに戸惑っていましたが、「銀行が晴れの日に傘を貸して雨の日に取り上げる」の意味が腑に落ちたようです。私の助言を受け入れ、遊休資産売却による借入金の圧縮や役員報酬の削減等を行いました。
このことにより、H社のCRDランクは、2020年にBランク(偏差値53)、2021年に最上位のAランク(偏差値59)にランクアップしました。
McSSで自社の位置づけを明確にしたことが、銀行員の甘言に乗せられず、より強靭な財務体質へと改善していくきっかけになったわけです。
なお先般、H社では、業務効率化のため、関係会社の事業をH社が譲り受ける組織再編を行いましたが、その判断にもMcSSのシミュレーション機能を活用しています。
今回のMcSSを活用して経営改善に成功したH社の事例は、中小企業診断士 安田 順様にお聞きしました。このほかにも安田様の著書:銀行が貸したい会社に変わる 社長のための「中小企業の決算書」財務分析のポイント(日本実業出版社)には、McSSを活用した具体的な経営改善策やノウハウが数多く掲載されていますので、併せてご参照ください。