代表理事会長ご挨拶

CRD協会は、中小企業の財務・非財務データやデフォルト・データを蓄積した「中小企業信用リスク情報データベース」(Credit Risk Database)を基礎とした精度の高い信用リスク評価モデルや中小企業に関する各種の信用リスク統計情報を金融機関をはじめとする皆様に提供し、わが国中小企業の資金調達環境の改善と金融機関におけるリスク管理の向上に資することを目的として設立されました。2001年3月、信用保証協会と金融機関の有志の皆様のご協力により、任意団体CRD運営協議会として誕生し、その後2009年6月に一般社団法人CRD協会に改組され、今日に至っております。

この間、当協会は、約3百万社の中小企業の26百万件を超える財務諸表(デフォルト・データは約35万社の4百万件弱)並びに約150万人の個人事業主の6百万件を超える財務諸表(デフォルト・データは、約20万人の百万件強)を蓄積し、膨大なデータベースに基づく堅牢で安定的なスコアリング・モデルに基づくサービスを提供してまいりました。リーマンショック直後においても、当協会のスコアリング・モデルが高いデフォルト判別能力を維持することができたのは、会員各位のご協力により、我が国のみならず、世界的にも最大規模の膨大な規模のデータベースを構築できたことによるところが大きいと考えております。

発足以来スコアリング・モデルは、経済状況や取引慣行の変化に対応して数回にわたる改定を行い、高いデフォルト判別能力を維持しております。

更に、当協会は蓄積された事業ノウハウを活用し、提供サービスを多様化していくことに積極的に取り組んでまいりました。中小企業の事業性評価に直結するコミュニケーションツール「中小企業経営診断システム」(McSS)やアパートローンの審査管理高度化を目指す「アパートローン共同DBサービス」等の様々なサービスの開発を行い、提供してまいりました。

最近では、AIを取り入れた「預金口座情報を活用した信用リスク評価モデル」(T-Forest)の開発を行いリアルタイムで債務者の信用リスクをモニターできるツールとして金融機関の皆様に提供を始めております。また中小企業庁からの委託事業により開発した、過去の財務情報から将来の企業の成長予測を行う「成長期待値評価モデル」の開発等でも各方面から注目をいただいております。

当協会の国際事業といたしましては、国際協力機構の支援の下、当協会のフィリピン中央銀行に対する技術協力として数年来進めてまいりましたプロジェクトが成功裏に進捗し、2023年4月25日にCRDスコアリング・モデルのローンチ・セレモニイが、フィリピン中央銀行において開催されました。

今後とも、既に重要なインフラとなっているデータベースを維持・発展し、会員の皆様をはじめご支援いただいている皆様のニーズに対応したサービスの提供を発展させていくとともに、我が国において構築したCRD協会のビジネス・モデルを他のアジア諸国等に拡大すべく努力してまいりたいと考えております。

2023年7月1日

代表理事会長 桑原 哲

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