CRDデータによる取引市場シェア分析~戦略的な出店アプローチへ~

金融業界における競争は激化し続けており、特に地域マーケットにおける自機関取引のシェア獲得は金融機関の成長において重要な要素となっています。地域経済への影響力を拡大させるためには、より戦略的なアプローチが求められます。現在、多くの金融機関において、店舗数の多い地域の融資シェアが高いのか、特に注力している地域における融資シェアが伸びているのか自機関のデータからだけでは判断出来きず苦慮していることが予想されます。また、地域別、業種別に売り上げや借入金の推移を分析しながら今後の店舗戦略を計画しようにも自機関データだけではデータ量が不足しており正確な分析が出来ないこともあります。これらの課題を克服し、より効率的なビジネス戦略を策定するためには、どうすればよいか見ていきましょう。
CRD協会の国内最大規模の中小企業データの活用
データ分析にあたって例えば、国内最大規模の中小企業データベース機関一般社団法人CRD協会のデータ活用例を紹介しましょう。CRD協会が蓄積しているデータは、1995年以降の全国、全業種の約2,600万件の法人データと660万件の個人事業主データに及びます。(2023年3月末現在)この膨大な情報を業種別、地区別、業歴、売上規模別といった様々な角度から深く分析することで、上記のような課題に対し、地域ごと、業種ごとの真のニーズを把握し、戦略を練る上での重要な手助けとなります。
CRDデータの特徴
- 1995年以降の全国、全業種の法人データが約2,600万件、個人データが660万件蓄積
- 業種別、地区別、都道府県別、業歴別、売上規模別、従業員規模別等様々な切り口から分析可能
- 売上規模1億円未満の小規模先のデータが豊富
- 集積が困難なデフォルトデータも法人で約370万件、個人事業主で約100万件集積

CRDデータを活用したシェアの把握
例えば下記のような課題があったとします。
課題
- 店舗数の多い地域の融資シェアは高いのか?
- 重点地域の融資シェアは伸びているのか?
- 地域や業種毎に、売上や借入金等の推移状況を見ながら、今後の店舗戦略を検討したい。
これらの課題にCRD協会の統計データを活用し、業種×地域別で融資先企業数を算出し、例えば、製造業が中心となっている地域で、不動産業への融資シェアが予想以上に高かった場合、そのデータを基に当該地域内店舗の営業職員を他店より再配置し、製造業への融資を新規開拓する施策を打ち出すことも可能でしょう。
また、新設された出張所の地域において、地域×企業数、地域×売上高(平均値)、地域×借入金残高(平均値)を算出し、売上や貸出が増加している傾向を把握できた場合、これを支店昇格への判断指標として用いることなども可能でしょう。
膨大なCRDデータを業種別、地区別、業歴、売上規模別といった様々な角度から深く分析することで、地域ごと、業種ごとの真のニーズを把握し、戦略を練る上での重要な指針となります。
<統計イメージ(数値は架空サンプルです)>

まとめ
金融機関が地域市場での競争力を高め、取引のシェアを拡大するためには、自機関データの分析のみならず、CRDデータのような客観性の高い大規模データの分析も不可欠です。これらのデータから算出される統計情報は地域市場を理解し、戦略的な出店計画を立案する上での指針となります。このように、外部データを駆使した戦略策定は単に業績を伸ばすだけでなく、地域社会に根ざした長期的な関係性の構築を支える重要なプロセスとなるでしょう。

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