金融機関と中小企業の認識ギャップの解消~McSSによる財務内容改善支援~

金融庁による「金融機関の取組みの評価等に関する企業アンケート調査」(令和5年6月28日)によると、金融機関から受けたいサービスとして約1/4の企業が「財務内容の改善支援」を選択しているのに対して、実際に受けたと認識している先は1割程度と少なく、企業のニーズに金融機関が十分対応できていないというギャップが生じています。金融機関はより多くの事業性評価に基づく融資を提供し、地域経済の活性化と雇用の維持に取り組まなければならないという命題もあります。今回はこのギャップをどう解消すべきか見ていきましょう。

課題への対応策

企業が感じている上記のギャップの要因には金融機関側の経営者との対話不足、ニーズ把握の不足があると考えられますが、金融機関側からしても業務過多、人手不足で手が回らない、内部用資料は存在しても顧客に見せられるような資料がなく決算書を徴求してもそのままにしているといった課題も存在するでしょう。

財務分析システムは導入しているものの出力される帳票は顧客に見せられるものではないといったケースも考えられます。今回はこれらの課題を解決に役立つ、国内最大規模の中小企業データベース機関一般社団法人CRD協会の中小企業経営診断システムを紹介します。

中小企業経営診断システム(McSS)

中小企業経営診断システム(略称:McSS / Management consulting Support System)は、取引先中小企業とのコミュニケーションにお困りの方や取引先の本業支援等、様々なシーンで活用可能な、わかりやすさ、使いやすさをコンセプトに開発された財務診断ツールです。企業経営者の方にもわかりやすい表現とビジュアルでコンパクトな帳票で時間制約のある企業訪問でも円滑なコミュニケーションが図ることができる工夫を行されています。

CRD協会に蓄積された全国約100万社の財務情報と比較した 『現状診断』 、さらに最長10年先までの予測決算データを作成し、現状の財務状況と比較する『将来シミュレーション』も、簡単な操作で行うことができます。

現状診断機能

国内最大規模の中小企業に関するデータベース機関という強みを生かし、他のベンダーでは提供されていない全国100万社と比較した同一都道府県中小企業における順位、全国同業他社と比較した順位が掲載され診断企業の「立ち位置」を容易に把握できます。
また財務面での「強み」「弱み」を併記することで当該企業の経営実態をバランスよく判断出来、企業の財務面の改善につながるような的確なコンサルディングに資するものとなっています。

McSS_現状診断機能

現状診断機能

  • 信用力の位置づけや、都道府県内順位、全国同業種内順位が把握できます。
  • 財務状況における『強み』と『弱み』を分かりやすく表示します。
  • 収益構造(売上高に占める売上原価、販管費等の構成比)が把握できます。
  • 足許のキャッシュフローを示します。
  • 必要とされる運転資金の金額と、債務償還年数を示します。

将来シミュレーション機能

売上高や売上原価など主要な項目に関する将来見通しを入力すると、最長10年分の貸借対照表・損益計算書・キャッシュフロー計算書が作成でき、経営支援計画策定から進捗管理まで、業務の効率化・省力化を支援します。

McSS_将来シミュレーション機能

将来シミュレーション機能

  • 直近期の計数で5年間推移した場合の予測BS・PLを自動作成する「簡易シミュレーション」
  • 主要項目の見通しを入力し予測BS・PLを作成する「シミュレーション前提設定」
  • 既に策定済の経営改善計画を入力し、内容を点検する「予測BS・PL直接入力」

中小企業経営診断システム(McSS)の活用

中小企業経営診断システム(McSS)を活用した経営支援の一例としてこのようなものが考えられます。

経営支援例

  1. 金融機関は、特に財務の弱点を抱える正常下位以下の企業を対象に、McSS帳票を基にした企業経営者との目標設定と対話を通じて経営状態の共有し、特に財務面の弱みについて理解双方で深めます。
  2. 経営者との対話により改善策、実施後の姿の共有を行います。
  3. 将来シミュレーション機能を用いて明確な目標設定をし、毎年の進捗状況の確認を繰り返すことで、長期的に企業の健全性をランクアップさせ続けることを目指します

この持続的なフォローアップとサポート体制が、企業側の金融機関への信頼度の向上や金融機関と目線合わせも可能となり、経営改善への動機づけに繋がることでしょう。

経営者との面談回数増加による対話力の向上

McSS帳票はそのまま取引先に提示出来る様式となっているため、帳票持参して取引先訪問を行うと、診断企業の偏差値や順位や財務面の強み、弱みが経営者にも理解しやすいように表示されるため、経営者にとっては興味を示しやすく、その結果、面談回数が増加し対話の機会が増えているといった事例もあります。また営業担当に当システムを入れたタブレット端末を配布し取引先との対話に活用できるよう研修を重ねたところ、職員の目利き力も向上し、取引先からは「こんなアドバイスをしてくれる金融機関との取引は欠かせない」と評価されているといった事例も出ています。

利用者の声

  • 代表者と親密になり、住宅ローン、個人ローンの獲得、追加融資実行、他機関肩代わりに成功。
  • シミュレーション通りの対応を行うことを前提に融資を実行したところ、4年間で信用力が大幅改善、企業経営者に大変喜んでもらった。
  • 取引先企業にMcSS帳票を説明する際には、この評価は当機関の評価ではなく、信用保証協会の保証料率を決定している評価モデルを開発したCRD協会の評価であると説明すると、信憑性は増し、経営者はより一層関心を示してくれる。

まとめ

冒頭に述べたような金融機関と企業経営者との間にある財務内容の改善支援に対する認識のギャップを解消する手段として、McSSのような経営者との対話のきっかけとなるツールを活用することも一つの手段となり得るでしょう。金融機関によるMcSSを軸にしたきめ細やかな対話とサポートは、経営改善への具体的な道筋を企業に提供し、長期的な経営の健全性向上をもたらします。また、このようなアプローチは金融機関の担当者自身の対話スキル向上にも寄与し、双方にとって有益な関係性構築と持続可能な成長を促進する土台にもなるでしょう。

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