大規模データから見た輸送用機械器具製造業の現状と予測~脱炭素化とEV化の与える影響~

世界は脱炭素社会へと舵を切り、その波は輸送用機械の部品メーカーにも押し寄せています。自動車業界はEV化の進行とともに、短期間で潮流が変わる可能性があり、これまでの燃焼エンジン用の部品に依存するビジネスモデルでは立ち行かなくなる時代が迫っています。たとえば、EVは従来の自動車より使用部品が少なく、その影響は従来型の部品メーカーにとっては痛手となり得ます。数多くの企業がすでにその影響を感じ始めており、幾つかの企業はすでに新しいビジネスモデルへとシフトしています。
目次
統計データに基づく現状理解の必要性
統計データは、業界で起こっている変化を客観的に把握するための必要不可欠なツールです。各業種毎の融資先数の割合や中央値といったデータに注目することで、特にEV化の影響を受けやすい輸送用機械器具製造業及び自動車産業サプライチェーン関連業種の現状を理解することが出来るでしょう。たとえば、自動車部品の市場は、政策や消費者の意識の変化によって突如として変わりうるため、業界としてはこれらのデータをもとに柔軟に戦略を練ることが求められます。
CRD協会の国内最大規模の中小企業データの活用
主要勘定科目統計データの利用
このような現状を理解するためには、自機関データだけで読み解くことは限界があります。例えば、国内最大規模の中小企業データベース機関一般社団法人CRD協会のデータを活用し、輸送用機械器具製造業及び自動車産業サプライチェーン関連業種について、自県、隣県、全国の3種類のエリア単位で債務者数、売上高、資本合計といった主要勘定科目の中央値、合計値データを比較することができます。CRD協会が蓄積しているデータは、1995年以降の全国、全業種の約2,600万件の法人データと660万件の個人事業主データに及びます。(2023年3月末現在)この膨大な情報を利用すれば、業種別、地区別、業歴、売上規模別といった様々な角度から深く分析することも可能でより精度の高い分析も可能となります。
CRDデータの特徴
- 1995年以降の全国、全業種の法人データが約2,600万件、個人データが660万件蓄積
- 業種別、地区別、都道府県別、業歴別、売上規模別、従業員規模別等様々な切り口から分析可能
- 売上規模1億円未満の小規模先のデータが豊富
- 集積が困難なデフォルトデータも法人で約370万件、個人事業主で約100万件集積

景気の周期的変動の分析
過去に起こった大きな経済イベントが産業にどのように影響を与えたかを理解することも必要になるでしょう。CRD協会には1995年以降のデータが蓄積されており、リーマンショック以降コロナショックに至るまでのデータも時系列で分析することが可能です。これらの周期的な経済イベントが地域経済や各業種にどのような影響を与えるかを分析しておくことで、今後起こり得る変化に備える施策を計画するための知見が得られるでしょう。
効果の予測
地域ごとの債務者数の傾向
CRD協会のデータから、例えば輸送用機械器具製造業においては、自県では債務者数が約9割を占め、隣県でも7割を超える割合を示しており、地域的な特性が顕著であることが示されました。これは、地元の雇用および経済に与える影響が大きいことを意味しており、逆に地域経済がこれらの産業に与える影響も大きいと言えるでしょう。
売上高と資本合計の業種別比較
また、CRDデータでは売上高や資本合計は全業種でみると自県、隣県、全国すべてにおいて横ばいで推移しているにもかかわらず、輸送用機械器具、部品メーカーは増加傾向にありました。これは技術進化の中心である自動車部品メーカーが、他の業種に比べて成長期待のあるマーケットであることを示しています。
<統計イメージ(数値は架空サンプルです)>

まとめ
このようにCRD協会のような大規模データと比較した地域ごとの債務者数の傾向や業種別の売上高と資本合計のような分析は、より深く正確に企業の現状と直面している課題を明らかにするでしょう。脱炭素化やEV化の急速な進展によって、輸送用機械の部品メーカーは技術進化による市場の変化に迅速に対応する必要があります。大規模データから導き出された統計データはEV化という新たな技術革新に対して輸送用機械部品メーカーが持続可能な成長を遂げるための一助となるでしょう。

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