「決算書異常値アラート」でスコアリングモデルの弱点を補完~全取引先を俯瞰して粉飾リスクを早期検知する新しい手法~

近年、数百億円規模の粉飾決算による大型倒産が相次いでいます。
一見すると健全に見える企業が、実は不正な会計処理によって財務内容を良く見せていたというケースは珍しくありません。こうした粉飾倒産は、金融機関・商社・メーカーなど多くの企業に甚大な損害を与え、取引先の連鎖倒産を引き起こすことすらあります。与信管理の現場では、「粉飾の兆候をどう検知するか」がより重要なテーマになっています。
実際、粉飾は決算書を「良く見せる」ために行われるため、財務分析やスコアリングモデルでは見抜けないケースも多く存在します。
「あれほどスコアが良かったのに、なぜ倒産したのか」という疑問を持つこともあるでしょう。

そこで今回は粉飾の兆候をどう早期に察知するかお困りの方へ本記事では、全取引先を俯瞰して粉飾リスクを早期検知する新しい手法を解説します。
目次
粉飾を見抜くことはなぜ難しいのか
粉飾の厄介な点は、財務諸表そのものが「加工された数字」であることです。売上や利益などが意図的に良く見えるよう調整されているため、表面上は健全に見えてしまいます。そのため、財務分析やスコアリングモデルを用いても、粉飾された決算書を材料にしている限り、粉飾を見抜くことはできません。
与信管理の現場で一般的に用いられている財務分析やスコアリングモデルは、「提出された決算書が正しい」という前提のもと成り立っています。
スコアリングモデルは財務指標をもとに企業の健全性を評価しますが、粉飾によって数字が“良く見えるように加工されてしまうと、本来危険な企業を「優良企業」と評価してしまう可能性があります。このことが、粉飾を未然に防ぐことを難しくしている要因とも言えるでしょう。

異常値を見抜くには“基準値”が必要
では、粉飾を見抜くことが難しい中で、どのように粉飾の兆候を捉えればよいのでしょうか。
ここで重要になるのが、業種別の財務指標基準値です。企業の財務指標は業種によって大きく異なります。製造業とサービス業では、利益率も資産構成も異なります。そのため、単純に「数字が高い・低い」だけでは異常かどうか判断できません。
しかし、大量のデータから算出した業種別の財務指標基準値と比較出来れば、その企業の数字が業界の中で自然な範囲にあるのか、統計的に不自然な“異常値”なのかを客観的に評価できます。
粉飾そのものを特定することは出来なくても、その財務指標が基準値と比較して異常値かどうか判定することは可能です。

一般社団法人 CRD協会の決算書異常値検知の仕組み
国内最大規模の中小企業決算書データベース機関である一般社団法人CRD協会では、中小企業財務データベースから算出した業種別各種財務指標の基準値と比較し、異常値を検知する仕組み(CRDアラート)を提供しています。
この仕組みは、例えば「売上債権回転日数が同業種企業群と比較して過大な水準」であれば、「架空の売上債権を計上し売上高を水増ししている可能性がある」というように、粉飾決算の典型的なパターンを考慮して、各種財務指標値の異常値(過大/過小)とみなす基準値を業種別に設定し、粉飾の可能性について注意喚起するものです。

もちろん、異常値=粉飾ではありません。しかし、異常値は追加調査の必要性を示す“早期警戒シグナル”として有効です。
詳細はこちらから。
全取引先を俯瞰してチェック
さらに取引先の決算データをCSVで一括入力することで、全取引先の主要財務指標と異常値を俯瞰できるExcelレポートも簡単な手順で作成可能です。
縦軸に取引先名、横軸にスコアリングモデルの評点や主要財務指標を並べ、財務指標の異常値は赤色で自動ハイライトされます。
これにより、数百社〜数千社の決算書であっても一度で俯瞰的に評価でき、「スコアは良いのに財務指標に異常値がある企業」を瞬時に発見できます。
リスク企業の早期抽出、追加調査の優先順位付けに活用可能です。

1件でも粉飾倒産を防ぐことが出来れば導入コストは十分にペイする
粉飾倒産の被害額は数十億〜数百億円規模に及ぶことがあります。
そのため、たった1件の粉飾リスクを早期に察知できれば、導入コストは十分に回収できます。この仕組みは粉飾決算を言い当てるものではありませんが、粉飾の可能性を示唆する“異常値”を可視化し、粉飾倒産を未然に防ぐための強力な手助けとなるでしょう。

まとめ
粉飾を完全に見抜くことは困難です。しかし、粉飾の兆候となる“異常値”を早期に察知することで、粉飾リスクを大幅に低減することは可能です。
今回紹介した仕組みは、全取引先の決算を俯瞰し、粉飾リスクを早期に察知するための実用的な手法となるでしょう。
粉飾リスクにお悩みをお持ちの方は、ぜひ一度ご相談ください。

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