アパートローン債権管理の効率化~アパートローン共同データベースの活用~

アパートローンは、案件の入口審査だけでなく、その後も入居状況の定期的な確認作業、空室率上昇や金利上昇等のストレス事象の分析、ポートフォリオ全体の分析などの継続的な期中管理マネジメントが求められます。しかしながら、多くの金融機関で十分な対応が出来ていないというケースも多いようです。アパートローンは融資額が大きいにも関わらず限られた件数の自機関データでは、空室率や経費率、DSCRやLTVといった主な指標の妥当性が分析できず、適切なリスク管理が難しいという課題が存在します。今回はこのような課題にどう対応するか見ていきましょう。
目次
アパートローン債権管理の課題点
アパートローン債権管理における課題は下記のように多々ありますが、一番の課題は自機関だけではアパートローンを評価するのに十分なデータが集まらない、ポートフォリオ全体のリスク管理、期中管理への対応が困難という点に集約されるのではないでしょうか。
主なアパートローン債権管理の課題点
- アパートローンを評価するのに十分なデータが集まらない
- 賃貸住宅向け貸出のリスク管理に対する具体的な手法が不明確
- 貸出先の物件評価の基準が一貫性を欠いている
- 外部データとの比較分析ができないため、市場全体の動向がつかめない
- 紙やExcelベースで個別案件毎にデータを保持しており、自機関内でデータベース化出来ていない
- 金融機関間でのデータ共有がないため、業界全体の最適な貸出行動が見えない
- アパートローンの適切な価格設定やリスク評価のモデルが欠けている
- アパートローン関連データの分析スキルや知識が不足している
- アパートローン業界全体の標準統計情報やベンチマークが欠けている
課題への対応策
解決策としては管理ツールを導入するというのも一つの方法でしょう。しかしながら、仮に導入したとしても自機関だけのデータではデータ量が不足しており、外部データとの比較分析は困難という場合もあります。今回はこれらの管理課題を解決すべく、国内最大規模の中小企業データベース機関一般社団法人CRD協会が行っている取り組みをご紹介しましょう。
国内初のアパートローン共同データベース
一般社団法人CRD協会はアパートローン債権に関するデータ収集を開始し、2016年国内初のアパートローン共同データベースを構築しました。(現在も継続的にデータ集積中)
多数の金融機関が参加するデータベースであり、自機関データを補完する形でのリスク管理を可能にします。
共同データベースから、信用リスクの高い債権や物件属性の情報を得ることが出来、後述する各種集計や分析結果を情報還元いたします。とりわけ、比較分析レポートでは、物件特性による差異や自機関ポートフォリオの立ち位置などを知ることができ、貴重な情報となります。
CRD協会事務局によるデータ分析
ツールから出力出来る帳票の他に、CRD協会事務局で分析した会員個々のデータと構築した共同データベースとの比較分析結果レポートも年1回に還元しています。比較分析レポートを通じて、金融機関は自機関のリスクが業界平均と比較してどの水準にあるかを把握できるようになります。
<統計イメージ(数値は架空サンプルです)>

ワークショップの開催
共同データベースに参加している会員向けに年1回ワークショップも開催しています。
構築した最新の共同データベースについて、CRD事務局から分析結果を報告している他、アパートローンに関する様々なトピックについての意見交換会も実施しています。テーマ・トピックは会員から募り、事前にアンケート方式で質問として展開しその回答は、回答集として資料化します。当日はそれをもとに、会員同士でざっくばらんに情報交換が行われています。また、必要に応じ、外部講師を招聘して講演いただくこともあります。
参加会員全体に向けた定例のワークショップの他、DaSCORE-APLユーザー意見交換会など、要望に応じて、参加会員を限定したイベントを開催することもあります。このように共同データベース参加会員同士の横のつながりも構築出来、自機関だけでは気づかない気づきも得ることが出来るでしょう。
まとめ
アパートローン債権管理において、限られた件数の自機関データのみでは適切なリスク管理や分析が困難というのは多くの金融機関で共通した課題でしょう。今回紹介したCRD協会のアパートローン共同データベースは、このような課題解決への糸口となります。自機関データだけでリスク管理、分析が困難な場合このようなサービスを利用することも一考の余地があるでしょう。

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