信用リスク量の精緻化と見える化の実現~CRDツールを活用した効果的な与信管理の実現~

信用リスクの計測はハードウェア性能に起因し与信エクスポージャーが多い場合にシミュレーション計算に長時間要してしまうことも多々あります。そのため、簡便的に与信ポートフォリオの信用リスク量を近似できる日銀の解析手法(エクセル版)を利用し信用リスク計測を行っているという場合も多いでしょう。しかしながら、大口エクスポージャーが集中している場合は、精度の誤差が大きくなることが課題として認識されており、より精緻で継続的なシミュレーションが可能である信用リスク計測ツールへの切り替えも検討の余地があるでしょう。
今回はどのような信用リスク計測ツールが理想か見ていきましょう。
目次
CRD協会の信用リスク計測ツール
信用リスクを計測するツールは多く存在しますが、年間ライセンス費用が高額というものも少なくありません。今回はその中でもコストパフォーマンスに優れる国内最大規模の中小企業データベース機関一般社団法人CRD協会の信用リスク量計測ツールをご紹介しましょう。CRD協会のツールには下記のような特徴があります。
CRDツールの特徴
- 多種多様なグラフや図表を表示する分析機能
- ストレステスト機能
- 定期的なポートフォリオ管理のための比較分析機能
多種多様なグラフや図表を表示する分析機能
リスク量を全体・グループ別(業種別、店舗別、任意のグループ別等)での実数を把握するのみならず、各種のグラフや図表により、相互比較や時系列推移の検証が容易に実施できます。

ストレステスト機能
今後の景気・市場環境の変化や経営方針の変化といったストレスにより、リスク量がどのように変化し得るかについて、事前の予測と判断を可能にします。

定期的なポートフォリオ管理のための比較分析機能
定期的なリスク計量を実施し、前回と今回のリスク量が変化した場合に、「どのような原因で、それぞれどの程度のインパクトを与えたのか」を分析します。また、リスク量変化に寄与した要因を特定することで、リスク管理の対象(例えばPDなのか保全なのか)が明確になります。
簡易分析レポートサービス
信用リスク量計測のためのデータをCRDに提供すると、ツールを用いて計測した結果及び計測された信用リスク量をベースとしたポートフォリオ分析の結果をレポートとしてまとめます。
ポートフォリオ全体についての(1)全国ベースの業種相関を加味した場合、(2)地域ブロック別の業種相関を加味した場合、(3)業種相関を加味しない場合に応じて信用リスク量を計測します。ポートフォリオ全体の計測に加え、地域ブロック別、業種別、格付別、店舗別など、別の計測が可能となっており、ご希望のカテゴリーに分けた場合のリスクの所在とリスク量の把握が可能です。カテゴリーごとに信用リスクの偏りがないかチェック。大口与信先の影響等、リスク要素を特定することでその要因を推測します。
ツール導入の効果
CRDのツールを用いた信用リスクの可視化により、四半期ごとのリスク管理委員会での報告が改善されたという例もあります。これまでは全体ULの増減額のみを報告する形でしたが、ツールによる分析資料を活用し前期比での主要因や個社影響度を明確に説明することで、経営層の信用リスクへの理解が深まり、活発な議論が行われるようになりました。また、信用リスク量がわかりやすい形で見える化されたことにより、RAF(リスク・アペタイト・フレームワーク)の考え方を取り入れた収益計画の立案を議論することに繋がっています。
まとめ
ハードウェアの進化によりこのようなツールを使うことでより精緻に信用リスク計量のシミュレーションを行うことが可能です。これにより信用リスクの多面的な分析を行い、具体的な数値と視覚的な図表を組み合わせることで、リスク管理の質を一段と高めることが可能になり、より高度なリスク管理戦略を構築する基盤を作り出します。今回紹介したツールは信用リスク計量化の高度化への一助となるでしょう。

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