アパートローン債権管理の効率化~データ蓄積・物件評価ツールの活用~

金融機関のアパートローン債権管理に関して、独自に作成したエクセルシートに依存した支店管理になっているという事例も多く、本部では全店閲覧できるものの、入口審査(DSCR等)基準の妥当性評価やポートフォリオ全体のリスク分析が十分にできていないという課題があります。
今回はアパートローン債権の効率的な管理方法や適切なリスク分析を行う為にどのような方法があるか見ていきましょう。
課題への対応策
解決策としては管理ツールを導入するというのも一つの方法でしょう。今回はアパートローン債権管理に関する各種課題に対応すべく開発された、国内最大規模の中小企業データベース機関一般社団法人CRD協会の提供するツールをご紹介します。
データ蓄積・物件評価ツール(DaSCORE-APL)
CRD協会の提供する「データ蓄積・物件評価ツール(DaSCORE-APL)」はデータ蓄積機能を備えており、審査データや期中実績データ等アパートローンに係るデータを一元管理し、いつでも分析出来る環境を整備可能です。また、将来賃料の自動補正や不動産鑑定士の監修によるコスト自動計算機能等の独自機能により、物件単位での客観的な収支評価が可能です。さらに、リスクシナリオを設定することにより収支計画の妥当性・保守性を高めることが可能となり、より効率的かつ正確な管理が可能となります。
<主な特徴>
機能 | 特徴 | 効果 |
データ蓄積機能(データの標準化) | データ整備・データベース化サポート | アパートローンに係るデータを集約し、いつでも分析が可能となる環境を整備、これにより本支店間で効率的に情報を共有が可能。 |
収支評価機能(収支計画の標準化) | ・賃料相場の経年による下落の程度を推定し収支計画に反映 ・不動産鑑定士が標準的と考える費用を自動推定し、収支計画に反映 ・金利、空室率の2パターンのリスクシナリオを設定可能 | 収支計画の自動作成やDSCR、LTV等の算出を行うことで、管理業務の手間を削減し、より正確な審査を実施することが可能。 |
期中管理機能(管理手法の標準化) | 期中管理業務サポート | 予実対比による実績管理が可能。 |
<DaSCORE-APL利用イメージ(数値は架空サンプルです)>

<主な機能>
機能 | 特徴 |
収支シミュレーション | 各金融機関の審査基準に従い、案件共通でベースのシナリオ設定が可能。 |
ストレスシナリオ | 空室率シナリオと金利シナリオに個別シナリオのストレスシナリオ1、ストレスシナリオ2を採用して作成した収支シミュレーションを表示。 |
期中管理 | 登録された期中実績データから、各計画年の実績値を表示。「実績経費率」や「実績DSCR」、「実績案件キャッシュフロー」、基準年度末時点の自機関担保評価額に基づく「LTV」も表示。また「物件純収益」についての予実対比を「計画対比(%値)」で表示。 |
案件合算 | 案件合算帳票は、指定した最大10件までの案件を合算し、指定表示期間中の合算収支シミュレーションを表示。また指定した案件の収支計画の値が同一基準年度毎に合算されて表示。 |
担保評価 | 融資対象となるアパート経営から生じる純収益を使って、収益還元法による2つの担保評価(参考値)を算出。「自機関評価」、「DCF法による参考評価」、「直接還元法による参考評価」について、担保評価額及び実行時LTVを比較可能。 |
DaSCORE-APL導入のメリット
DaSCORE-APL導入の効果とメリットとして大きく下記の3点が挙げられます。
効果 | メリット |
生産性の向上 | 物件評価や収支シミュレーションが自動化され、これにより時間を大幅に節約することができ、全体の生産性が向上。 |
公平な評価 | 各物件が一元的かつ客観的に評価されるため、個々の評価基準による差異を排除し、公平な評価が可能。 |
データ共有の容易さ | 共有データベースの利用により、本支店間で効率的に情報を共有可能。案件間の物件比較も容易に可能。 |
活用事例
ツールの導入によりデータ管理の効率化と分析頻度の向上や顧客満足度向上に繋がったという事例も出ています。従来のエクセル管理ではデータ集約に膨大な時間がかかるため、リスク分析(評価基準の妥当性評価等)が殆ど出来なかったところ、ツール導入後はデータ管理を効率化でき、リスク分析も年1回以上行えるようになったという事例や収支計画作成と実績管理が簡単に行え、複数物件の合算や顧客向け帳票を出力する機能も備えていることから、顧客の納得感が高まったという事例があります。
まとめ
今回紹介したCRD協会の管理ツールを活用することで、アパートローン債権の入口審査から期中管理まで効率的なマネジメントを行うことが可能となり、多くの金融機関で課題となっているアパートローン債権管理の効率化、高度化に寄与するでしょう。自機関内で管理方法が統一化されておらず、効率的な期中管理や分析が困難な場合このようなサービスを利用することも一考の余地があるでしょう。

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