住宅ローン債権のリスク管理高度化の実現~住宅ローン共同DBの活用事例~

住宅ローンは事業法人向けの貸出や消費者向けローンと比較すると融資期間が長期にわたる為、金利変動やデフォルト率の長期的な変移、期限前返済が収益に大きな影響を与えます。このため金融機関は、住宅ローンにおける長期融資のリスク評価を求められますが、貸出実行後のリスク量計算をはじめ、債務者の与信管理や属性変化のモニタリングといった中間管理、採算管理が必ずしも十分に実施できていないことが課題となっています。
今回はこれらの課題にどう対処すればいいか見ていきましょう。

住宅ローン共同データベース

この課題への一つの対応策として、国内最大規模の中小企業データベース機関一般社団法人CRD協会が展開している住宅ローン共同データベースサービスを今回は紹介しましょう。この仕組みは住宅ローン融資における管理面の効率化・高度化に加え、今後の戦略を考えるうえでのベースとなる有益な情報を提供することを目指して、2013年4月よりサービスが開始されました。この共同DBサービスに加入すると下記のようなサービスを受けることが可能です

サービス内容

  • データ蓄積・スコアリングツールDaSCORE-HL. Analyzerの提供
  • 共同DBを活用した各種分析結果の定期的な還元
  • CRD協会主催の住宅ローン共同データベース参加会員向け各種情報交換会・研究会の開催

住宅ローン共同データベースの概要

データ蓄積・スコアリングツール・DaSCORE-HL. Analyzer

DaSCORE-HL. Analyzer は、データ蓄積を始め、ポートフォリオを対象とした12種類の各種集計、簡易収益計算までを行うことが可能です。このツールを活用することで、自機関内の各種データの蓄積が可能となるほか、リスク評価面ではデフォルトモデル及びプリペイメントモデルを活用し、将来にわたるデフォルト及び繰上げ返済リスクを予測可能です。また、債権ごと・ポートフォリオ全体でのデフォルト・繰上返済の確率やスコアを計算し、それを元に収益計算を行うことができます。申込書の電子化事例の紹介も行っていますので、住宅ローンに関するデータを当ツールに集約し一元管理が可能です。

<分析イメージ(数値は架空サンプルです)>※スコアリング結果を一部使用

共同DBを活用した各種分析結果の定期的な還元

年1回、金融当局目線を意識した分析内容をふんだんに盛り込んだ、全国データ(共同データベースの収集データ)との比較分析レポートを提供しています。当局への提示資料や、内部報告会の資料としてご活用いただける内容となっており、自機関内のデータと共同DBの状況を比較分析することで、還元情報をポートフォリオ分析や経営戦略の検討に利用可能です。

<レポートイメージ(数値は架空サンプルです)>

各種情報交換会・研究会

年1回、会員向けのワークショップを開催しており、会員同士の意見交換の場としてご活用可能です。
時事の収益管理・リスク管理の話題や、各会員が抱える課題等について、ざっくばらんにお話いただける場になっており、収益管理・リスク管理のトピックスについての分析結果も発表しています。
情報収集の他、参加会員同士の横の繋がりも構築出来、より有益な情報交換が可能でしょう。

導入による効果

例えば全貸出額に占める住宅ローン債権残高の割合が高い金融機関は、金融庁検査では重点的にヒアリングされることがありますが、住宅ローン債権のリスク管理体制の整備が進むことで的確な説明が可能となります。 また、共同DBの還元情報を活用することにより、住宅ローン案件の承認ラインの見直しや顧客属性に応じた優遇金利の設定を行うことが可能となったという事例もあります。

まとめ

自機関のデータだけでは分析が困難な場合、このような共同データベースサービスを利用することでより客観的な情報に裏付けされた比較分析が可能となります。住宅ローン関連の情報を当ツールで一元管理すれば、期中管理から当局説明資料作成等の効率化と高度化を実現出来るでしょう。このようなサービスの活用は住宅ローン債権管理全体の効率化に寄与するものとなるはずです。

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